旅の感想文 フンザへ写真撮影の旅13日間
2006夏 山野荘一
6年ぶりにパスー村(2,543m)に降り立つ。
タポプダン(6,100m)の尖鋭な姿、静かな村のたたずまい、今さらながらこの風景は自然のなりわい以外の変化は好まない!!
この度ガイドのアミンさん(※弊社代表の名前です)の都合がついたので、フンザへの再訪が決まり、関西空港から旅立つ。
イスラマバードからの国内線飛行機は、最近、ギルギットまでのフォッカー機が運行停止になってしまい、陸路を覚悟していたものの、運良く軍用機の搭乗がなった。午前中にギルギット着、軍用機なんて初体験である。出だし、上々のスタート。
フンザの中心地カリマバードまでは道路事情も良いとのことで、昼食後、普通車で行く。早速、途中停車で写真を撮りながら、アミンさんの友人、ワジットさんが経営するカリマバードのエンバシーホテルに到着。ラカポシ(7,778m)、デイラン(7,266m)、ウルタル(7,388m)が勇姿を見せてくれた(7,000m級の山はカラコルムに集中している)。特有のブルーの空とまではいかないが、夏山はこんなものかと納得し、夕食前の散策。
翌日、カリマバード周辺周遊としてホッパー氷河、ドゥイカル展望台、バルチット・フォートをジープでまわる。随所で車を止め、写真撮影に忙しい。早朝は若干、ラカポシが朝日に染まった。帰路に村内を歩き、村人の笑顔を写すのだが、楽しそうなので、ついつい長居をしてしまう。
パスー村までは1H程なので余裕で出発。途中のグルキン氷河も以前と様相が変わり、ハイキングはルートがやや危険なので取り止め。気象異変で年々の変化が激しいようだ。今回の目的のひとつ、フンジュラーブ峠にはいつ行くか…なにより天候、そして高所順応が気がかりである。
パスーに到着して、すぐに村内散策。アミンさんの家族は全員留守。今の時期は農繁期で農作業に出ていたり、各戸とも牧畜のため、さらに高地の夏村の家に行っているそうだ。昼間の村内は静か。アミンさんの叔母さんの家でチャイをいただく。とりたてのアンズは美味だが、食べ過ぎないように用心する(お腹をこわしてしまうため)。出会う村内の人皆さん、挨拶をしてくれるのは快い。
運悪くフンジュラーブ峠への道路が壊れていて、トラックが60台位停滞しているとか。 この時期のこのような天候不順は、アミンさんも経験したことがないという。
翌日、手はじめにボリット湖よりパスー氷河へ行く。湖畔のロッジのオーナーと、6年ぶりの再会。先方が覚えているかどうか、お互いにヒゲをさわりパキスタン式挨拶(抱き合う)で親しみがわく。以前は歩いた道も、ジープで氷河間際まで行けるようになっていた。目前の氷河は威圧感じゅうぶん。こんな近くでの光景はネパールでは味わえない、いくらシャッターを押しても満足がいかない。どうすれば良いカットになるのだろう。昼食はアミンさんの家に招待され、妹さんの手料理に大満足! 彼のお母さんの話で、長い吊り橋までの道は私には少々あぶなっかしいかも、とのことで断念。
中国との国境であるフンジュラーブ峠(4,800m)に行けるゴーサインが出たので、早朝出発。途中1.5H程道路補修のため停滞したが、首尾よく峠に到着。快晴とはいえないが、防寒具も不要な気象はめずらしいそうだ。花を写すのに上下の動作を続けているうちに、この高度での長居は無理、と引きあげることに。帰路になると小型車のみ通行可能の箇所もあらわれ、水量も増していて、自然の急変を目の当たりに見る。
翌日、ジープでシムシャールの途中まで行ってみようということになり出発するが、1H程で道が土砂崩れになっており通過不能、引き返す。パスー村へ戻り、村の高台(墓所でもある)へ登り、村全体を俯瞰して見る。素晴らしい眺望である。村内を散歩しながら戻り、涼しくなった頃、パキスタン側最後の村、中国貿易のドライ・ポートになっているススト村へ。ハデな装飾をほどこしていることで有名な、パキスタンのトラックを写すのが目的だ。アミンさんの提案で、上部の荷受け、計量所、ドライバーと、それぞれ自慢の車体を写す(入れたのはアミンさんのおかげ、感謝!)。運転席内(も装飾がすごいのである)まで案内してくれるドライバー達のサービスっぷりに、こちらも大いに満足の一刻だった。
夕食後、一時的に雨、稲妻、雷となり、名峰タポプダンの上空を、横に走る閃光にしばし見とれた。しかし本来は乾燥地帯であるこの地域、今回の異常気象(雨と雷)でほとんどの道路がくずれた。帰路のカリマバード~ギルギット、ギルギット~チラース、先日訪れたホッパー氷河への道も不通になったという。それにしてもアミンさんへの現地情報の早いこと、正確なこと! すべて人づてなのに(細々とした電話線は一時不通)!
最終日、パスー氷河に氷水を飲みに行く。末端からの融水へ、アミンさん、ズボンをまくり、膝下まで入り流れてくる氷をつかまえるが、あまりの冷たさに数分で頭の芯までシビレて戻る。持参のグラスに、これぞミネラル・ウォーターを入れて氷を浮かす。これができるのもパスーの氷だけ。パスー氷河の醍醐味!? 目の前上部は表面褐色だが、巨大な氷の世界。貴重な体験だった。
パスーからの帰途に着く。小型車のみ通行可能の情報でギルギットヘ。翌日も道路事情を考慮して、ハイエース車だった予定をジープに変更した、とアミンさん。途中での乗り継ぎ、車の乗りかえ等、状況変化に応じての彼の的確な判断により、予定通り2日間でイスラマバードに戻った。帰りのラカポシでは、これが本当のフンザの夏を思わせる青空と、優雅な姿を見せてもらい感激・・・。タキシラ遺跡も見学できた。
アミンさんは普段、日本のテレビ・コーディネーションの仕事が多いので、久しぶりのガイドとか。私のような老人相手では申し訳ないような日々であったが、ゆったりとした日程を組んでもらい、日本語でのガイドで上部パスーを中心にした悠々の旅に心からお礼を申し上げます。
シルクロード・キャラバンより
世界的な天候不順の中、パキスタン北部でも50年ぶりの雨。各所で、道路が壊れては復旧を繰り返す中、大変、ご不便をおかけいたしました。
それにしても70代半ばの山野さんのお元気なこと! 普段、ネパールの山々のトレッキングで鍛えていらっしゃるだけのこと、ありますね。
ご帰国後、「予想もしなかった軍用機搭乗にびっくり」と、はずむ声でご報告を受けたのには微笑みました(※通常、大きなパッケージツアーでは、国内線飛行機そのものが利用されません)。それに白いパスー氷河末端でのミネラル・ウォーター、最高ですよね。
お書きいただいたように、現地の人間の情報収集の早さには、フンザに嫁いでおります私も毎回、驚くばかり。(電話に頼れない通信事情下)電話がいらない、と思われるほどの早さ。自然状況が刻々変わる環境の中、多民族パキスタンにあっても、現地を知り尽くした北部山岳民族、フンザ人などのプロのガイドを選ぶことは、安全な良い旅をしていただく条件のひとつかと思います。